胃がんについて

胃の仕組みと働き

食べ物をよくかんで飲み込むと、食道を通って胃にたまります。食べ物を見たり、味わっていたりするときから、胃では胃液が分泌されて消化や吸収の準備を始めています。

胃液は胃酸(塩酸)、消化酵素(ペプシン)、粘液の3種類から構成されていて、食べ物を撹拌しながら、消化・吸収しやすい形に変えていきます。
たとえば、屑酸は大変強い塩酸を主成分とし、食べ物を殺菌する働きを持っています。胃粘液は薄い膜をつくり、胃酸から粘膜を保護する機能をもっています。
糖質はブドウ糖、タンバク質はアミノ酸、脂肪はグリセリンと脂肪酸にまで分解され、小腸で吸警れます。

しかし、一部の糖質、とくにアルコールなどは胃粘膜からも吸収されています。胃のなかのものは、ぜん動運動によって、少しずつ十二指腸へ送られます。

ぜん動運動とは、胃壁の筋肉(平滑筋) や支配神経、消化管ホルモンでコントロールされている収縮波が徐々に起こることで、正常動くと1、2時間で胃から十二指腸へ内容物は流れていきます。このと胃の出口(幽門部)には、内容物が少しずつ十二指腸へ動いていくように括約筋が調節しています。

食物は十二指腸では質や胆汁などかつやくきんの働きを受けて、さらに小腸で吸収しゃすいミクロン単位の形に分解されていきます。胃が空っぽのときの大きさは、大わんの長さが18cm、幅7cmのまるでしぼんだ風船のようですが、食べ物が入ってくると、長さは、25cm、幅13cm、厚さ6~8cmと、ゴム袋のように膨れます。また、胃の形には個人差があります。

胃がんはなぜできるか?

生体細胞は、その遺伝子情報によって細胞分裂し、さまぎまな臓器を形作る細胞になっていきます。細胞は絶えず新しいものと取って変わっています。

この新旧交代の過程で、なにかのきっかけで突然変異を引き起こすことがあります。すると、もとの細胞とは性質の異なる細胞が出現します。これががん細胞(悪性腫瘍)です。

白血球などの免疫細胞は、がん細胞を見つけると異物と判断して攻撃を始めます。多くのがん細胞はこの白血球との闘いに敗れて死んでしまいますが、なかには生き残っていく細胞もあります。こうして何年もかかって、がん細胞は体内で栄養を取りながら大きくなり、やがて検査で見つかるほど(腫瘍の大きさとしては1 センチぐらい) に成長します。この時期は無症状のまま経過することが多いため、検査で発見されることが重要です。

そのまま気づかず過ごしてしまった場合は、いろいろな症状が出始めてしまうでしょう。がんは体の組織すべてに発生します。髪の毛と爪以外の皮膚、脂肪、筋肉、血管、歯肉、乳腺、生殖器などでくり返し出現し、成長しようとします。

正常細胞からがん細胞に変化するときのきっかけは、遺伝因子とともに、環境による因子も大きいと考えられています。
たとえば、紫外線、大気汚染、食品添加物などのほか、胃がんでは塩分の多い食事や生活上のストレスから引き起こされやすくなります。
ストレスは毎日の生活の中で避けることのできないものですが、上手にコントロールしていくことができないと、免疫細胞の活動力を弱めることがわかっています。
また、ストレスがかかりすぎると、古い細胞が新しい細胞に生まれ変わるときに、できの悪い紳胞をつくる原因になります。

アルコールやタバコは、胃粘膜を強く刺激し弱らせます。しかし、これらの要因をすべて取り除いても、がんが引き起こされる可能性はあるため、がんを完全に予防することはできないといえるでしょう。
がん細胞の特徴は、生体のしくみに従わず、勝手に増殖していくことです。周囲の組織に入り込んで、まるで根を広げるように大きく成長します。
また、体内に細かく網の目のようにはりめぐらされている血管やリンパ管に入り込んで、いろいろな臓器に運ばれて、そのなかで増えていくこともあります。がんの「リンパ行性転移」です。

また、腹膜などにがんが露出すると、そこからがん細胞がこぼれ落ちて腹腔のあちこちにあたかも種をまいたかのように転移を起こすこともあります。

これを「播種性転移」といいます。がん細胞を顕微鏡で観察してみると、細胞組織はその形態から「高分化型」「中分化型」「低分化型」「未分化型」の4つに分かれています。

高分化型は正常組織に近い形で、細胞組織が秩序よく等間隔に並んでいます。中・低分化型は、組織の形が崩れていることが多く、大きさも並び方も不揃いです。悪性度が高く活動的なため、急に大きく成長したり、ほかの臓器に転移したりすることもあります。
未分化型はがんの発見から半年間で人間を死に至らしめるほど、体の中で急激に増殖します。

このようながん細胞と正常な細胞との遠いを専門家たちは「顔つき」にたとえて表現することがあります。正常細胞をふつうの顔つきとするなら、たとえば、悪性度の高い細胞は正常細胞と形状がまるきり異なるため「顔つきが悪い」、また悪性度の低いがんは正常細胞と似ているため「顔つきがおとなしい」と呼びます。

大腸では高分化がんが90%以上、低分化、未分化がんがそれぞれ5パーセントと、圧倒的に高分化がんが多いため、悪性腫瘍自体の性格もおとなしくなります。しかし、同じ高分化がんでも胃にできるものは、低分化との間の性質の差がとても小さいのです。つまり、転移率や再発率を比較したときに、胃の場合は高分化がんだからおとなしいとはいえないわけです。

胃がんになりやすい人

日本では、がんのなかでも消化器がんの罹患率が高く、とくに胃がんは圧倒的に多く見られます。このため、医学の研究が盛んに行われた結果、早期発見や手術などの方法について、今や世界のリーダー的な役割を果たしています。

世界では、中国、韓国などのアジア地域のほか、チリなどの中南米諸国、東欧諸国で罹患率が高くなっています。その原因はまだ明らかになってはいませんが、塩分の消費量が多い地域ほど患者さんが多いということはわかっています。
過剰な塩分摂取によって、胃粘膜の保護機能が失われ、がんのできやすい環境をつくっているとも考えられています。

また、男性のほうが女性より罹患率が2倍近く多いというデータがありますが、これは、

  1. アルコール摂取量が多い
  2. 食物の好み
  3. ホルモンの関与

と考えられます。年齢別では、がん年齢と呼ばれる程から徐々に患者さんが増えはじめて、男性では60代、女性では50代が一番多くなっています。

がんが日本人の死因のトップを占める理由

現在、日本人の三大死因は、悪性新生物(がん)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血) です。なかでもがんは1981年から脳血管障害に代わって、死因の1位となりました。
日本人の3人に1人ががんで亡くなっています。

それまでは虚血性心疾患が増加傾向にありましたが、生活習慣を変化させることについての考えが普及したことや医学が発達してきていることから、93年、94年からこちらの死亡率は下降しはじめました。とくに、虚血性心疾患の予防法と治療は確立してきました。
薬物治療やカテーテル療法、食事療法などにより、好成績をあげています。このほか、心臓のペースメーカーも予防的側面から大きな役割を果たしています。

また、脳血管障害では薬物治療や食事療法で血圧を下げることが定着してきました。また、MR Iなどの検査で脳の動脈癌の発見、脳梗塞の診断などが容易にできるようになりました。

たとえ、発病しても動脈拡張術など、脳血管障害による死亡を予防できる治療が確立されています。しかし、がんについては、高齢化社会の落とし子でもあり、原因が複雑にからみあつているので予防する方法がないといっても過言ではないでしょう。

環境因子をできるだけ取り除きながら生きていったとしても、100%予防できる手立てがないのが現状です。このため、日ごろから体の変化にはじゅうぶん注意を払うこと、定期検診を受けてがんの芽をつみとることが、早期発見につながります。胃がんは早期に発見できれば、外科的切除治療で完治する可能性が高い病気です。何度もくりかえしますが、いまや早期胃がんや大腸がんの5年生存率は90%を超えて、これらのがんで亡くなってしまうというのは、医者の立場から考えて無念としかいいようがありません。

また、たとえ検査でがんが発見されても、自分の人生を納得のいくように過ごしていくためには、自分の病気を正確に把握して治療法を選び取っていただきたく思います。

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