最新のPET検査も がん検診には万能ではない

腫瘍マーカー採血や検診などの一般採血では早期がんは見つからないはちょっと意外だったかもしれませんが、PET検査も万能ではないのです。

がん検診のひとつとして、人間ドックなどで行われている検査に「PET(ペット)検査」というものがあります。PETは、positron emission tomography (陽電子放出断層撮影) の略です。

ガン細胞はブドウ糖を栄養素として成長するため、通常の細胞の約3~10倍ものブドウ糖を消費するといわれています。PET検査は、がん細胞がブドウ糖を多く消費する性質を利用して、ブドウ糖に近い成分のFDGと呼ばれる放射性物質を体内に注射し、その放射性物質ががんに集まる様子を画像としてとらえる検査です。

現在、がんを早期発見する検査として主流になっているCT検査やMRI検査は、映し出された臓器の形態や病変の形から、がんを見つけ出すものです。

これに対してPET検査は、がん細胞のブドウ糖の取り込みやすさという性質を利用して、がんを見つけ出す仕組みとなっています。PET検査は、もともと転移を含めたがん病巣の広がりや、がんの再発を見るための検査として開発されたもので、がんを早期で発見するのが本来の目的ではありませんでした。それにもかかわらず新しいがん検診機器としてマスコミが大々的に報道し、一部の検診クリニックの誇大広告などもあり、「すべてのがんが見つかる」というような大きな誤解が広がっていった実態があります。

そのため、最新のPET検査といえどもやはり万能ではありません。ブドウ糖の代謝が促進されている再発がんは数ミリの大きさでも捉えられること多いですが、ブドウ糖の取り込みが少ない早期がんは、PET検査では判別がとても難しいといわれています。また部位(臓器) たよっても、見つけすいがんと、見つけにくいがんがあります。

PET検査のメリットとしては、がんの転移や再発を早期に、より小さな病変で見つけることが可能という点です。一方、デメリットは食道や胃、大腸、肝臓などの早期がんの発見が難しいことや、放射性物質のFDG が集まりやすい脳や肝臓、腎臓、勝胱などのがんが見つけにくいこと、血糖値が高い人は診断が難しい点などが挙げられます。

さらに早期の肺がんはFDGががん細胞に集まりにくいため、胸部CTのほうが発見しやすいとされています。

最近ではPETにCT検査を組み合わせるPET/CT検査が増えており、PETの弱点を補う工夫がされていますが、それでも特に粘膜の微細な変化のみである早期の消化器がんは、こうした検査では発見するのは難しいのが現状です。

国立がん研究センターのがん予防・検診研究センターでは、ある年のがん検診でのPET検査陽性率の解析を行っています。それによると、1年間でがん総合検診を受けた約3000人中、約150人にがんが見つかり、そのうちPET検査で陽性となったのは15%に過ぎないというデータが発表されています。

これは、逆にいうと、85%のがんはPET検査では発見できないということです。同センター検診部長の医師は「PET検診の意義は小さいのではないか」ともコメントしていました。

PET検査装置は、最大で約10億円台の初期投資がかかるとされています。PET装置メーカーやPET装置を取り扱う商社や薬剤メーカーなどがこぞって医療機関に売り込んだことから、初期投資回収のために誇大広告をし、「すべてのがんが見つかるがん検診」として、誤解が広がっていったともいわれています。

人間ドックで最新のPET検査を受けたから、「がんの心配はゼロ」とは決していい切れないことを知っておいてほしいと思います。

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